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@bunkobonsuki
2026年9月7日

アンチ・スポーツの哲学
難波優輝
スポーツを「すごいやつを決めること」と定義し、世間で言われているスポーツの美点を検証・反駁する『アンチ・スポーツの哲学』。
本書は「アンチ・スポーツ」と書いているが、スポーツを否定しているわけではない。むしろ、スポーツの本然に帰ることを勧めている。
その本然こそが「すごいやつを決めること」なのだ。
読みながら、個人的に想いを馳せたことがある。「武道のスポーツ化」という言葉がある。武道の精神がスポーツ化することによって消えてしまうという批判である。
この言葉がよく分かっていなかった私だが、本書を読んで納得がいった。
2009年に剣道部の部員が稽古中に熱中症で倒れ、そのまま亡くなるという事件があった。この時、顧問は「過酷な鍛錬をすることで強くなる」という態度を取ったために部員を無理やり練習させていたという。この顧問の態度は体育会系の部活で広く見られるものだ。
だが、武道はスポーツではない。
別物なのである。
武道とは「生きる」知恵の体系である。
それが生まれた背景には「いつ襲われるか分からない」という現実があり、どれだけ死ぬ確率を減らせるかが武道の目的だった。
いわば武道はサバイバル術なのだ。
武道の系譜たる剣道もそうであったはずなのだが、いつしかスポーツ・体育会系の「しごき」的な文化に染まった。その結果、武道の考えとは真逆の現象が起きてしまったのである。
スポーツというと汗を流す光景が浮かぶ。
それは生存が確約された環境でのみ生じる特殊な光景である。だが、人は生存を当然だと思うようになると、あらゆる現象をスポーツに変えてしまう。「武道のスポーツ化」は、そのひとつである。
だからこそ「アンチ・スポーツ」の考えは必要なのである。当たり前のことを疑い、より高めること。それこそがスポーツ的な価値観ではないか。


