
傘野
@amemoyou0831
2026年8月6日
ファイア・ドーム(上)
辻村深月
読み終わった
物語前半、何も起こっていない穏やかな展開がつづくのに不穏さがずっとある。それが光太朗くんの行方不明をきっかけにいっきに噴出して息苦しい雰囲気になり、ふだんなら何でもなかった選択がその日に限って「最悪」になってしまったり、言葉の順番、選び方、情報で何を最初に出すか出さないか、些細なすれ違いが「断絶」を生んでしまう…その息苦しさはネットニュースのコメントが炎上している展開にピークを迎える。
このあたりが苦しいのは登場人物たちが「普通」の「いいひと」ばかりということと、実際のネットの炎上が間接的にひとを殺した事件を想起させるからだろう。そしてネットのコメントに加担する人たちの声は本当にただのお気持ち表明であって正義を振りかざして攻撃しているパターンはほとんどなく、そういう温度感もリアルだった。
「巽くん」が絶妙にやばい感じで、こういう『凍りのくじら』の若尾のような、他者をコントロールしようとする人間を描くのも上手いなあ、と感じる。下巻が非常に楽しみ。