ごうき
@IAMGK
2026年9月7日
風立ちぬ/美しい村改版
堀辰雄
読み終わった
「風立ちぬ、、いざ生きめやも。」
堀辰雄『風立ちぬ』
この作品を、美しいという言葉を持ってせずに、なんと形容できようか。私の最も好きな作品であり、長年私を支えてくれている作品でもある。
描かれている情景が素晴らしい。山奥の大自然に、病床に伏した女性と、お互いの愛・幸福を確かめながら生きていく。そうして最後には、愛する人の死を乗り越えて、強かに生きていく…。そうしたゆっくりと去っていく時の流れを、堀辰雄は正確に捉え、人物の心情を詳らかに書き留める。また、特筆すべきはその文体であり、山岳の美しい自然が、独特な文体によって眼前に拡がりをもつ。本作はその構成・文体を凝ることによって、時間的・空間的に拡がりを持つ二次元的な作品となったのである。
しかし単にその耽美な人間関係、美しい自然を描いたからと言って、本作が、堀辰雄がロマン派とされるわけではない。堀辰雄が目指したのはロマン主義ではなく、あくまでフランス文学に基づいた四季派であった。確かに主題が「愛」「生と死」といったものだからロマンチックに見えるけど、その裏には人間の心理など、緻密な計算があったのだろう。
とはいえ、当時主流だった私小説に逆らい、意図的に美しいものを創り上げていくフィクション性には、魅力があるのだろう。厳しい現実を生き抜いていく間に灯る、理想的な、美しい生活…。私もいつか、そういう生活を送ってみたいなぁ。

