ON READING "遠くまで歩く" 2025年4月6日

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2025年4月6日
遠くまで歩く
遠くまで歩く
柴崎友香
これほどまでに、現実と小説の世界がシームレスになった体験があっただろうか。読み始め、あまりのリアリティにかすかな居心地の悪さを感じたほどだった。読み進めるにつれ、登場人物たちの語りが私にとっても馴染みのあるものになってゆき、読み終えた今、それは私の中に「記憶」された。 私自身が忘れてしまっても、誰かが私の言葉を(声を、表情を)覚えていてくれる。逆もまた、しかり。 私はこの小説の中に登場した人物が思い出したこと、語ったことを、いつか断片的に思い出すだろう。そこに小説と現実の境はない。そのことの豊かさ。そのことの心強さ。 柴崎友香さんは、小説を小説世界の中から拡張するような作品を作り続けている。それでも、それが小説であるからこそ表現できること、超えられることだと信じているのだと、私は思う。
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