ドッグストエフスキー "個人的な体験" 2026年9月9日

個人的な体験
個人的な体験
大江健三郎
鳥は弱さを嫌悪し、自由を希求する。でも彼自身は全てにおいて弱い。27歳なのに肉体的には中年だし、絡んできた若者たちには不意打ち的な奇襲でしかダメージを与えることができない。精神的にも彼は弱い。不具の赤ん坊を殺すことも受け入れることもできない。赤ん坊を殺してと弱々しい声で言う義母に嫌悪感を持つ。それは義母が彼の中の弱さを想起させるからだ。でも義母はある種の強さがある。彼女は自分の弱さを隠さない。 鳥は自由な火見子と堕落した生活を送るが、過去に見捨てた同性愛者の青年と再会することで転機を迎える。彼は赤ん坊を自分の手で殺すかこれから育てるかどちらかのみに身を任せると決心する。彼は赤ん坊を殺したいという本音とやはり見捨てたくないという本音、相反する自分の弱さを受け入れたのだ。 彼は自由を殺した。そして火見子は彼を置いて自由の象徴であるアフリカへと向かうわけだが、不具の我が子を抱く彼は逆説的な自由を手に入れている。彼はもうアルコールに溺れないし、セックスにも溺れない。彼は弱さを引き受けることによって、新たな自由を手にしたのだ。 文体の力で読まされたけど、火見子との堕落云々は陳腐な感じがした。彼女は鳥に都合が良すぎると思う。魅力的ではあるので、彼女自身が主人公の別の小説が必要かな。 それよりも他の人とのやりとりのほうが面白かったかな。著者本人がこれは青春小説だと書いてたけど、その通りだと思う。だからこそ最後のくだりは必要だったと思うな。大江健三郎って情熱的ですよね。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved