
M市のR氏
@aoi-honmimi
2026年9月9日
針女
有吉佐和子
読み終わった
あの戦争から変わってしまったのは、いったい誰なのだろう。
出征した一人息子の弘一の帰りを待つ、東京の下町で仕立屋を営む夫婦と一家と同居する孤児の少女の清子。食糧不足や迫り来る空襲などに遭いながらも肩を寄せ合い日々を過ごした。そして、終戦を迎えて数年後に弘一は復員した。しかし、そこから彼らの関係は大きく変わってしまう。
弘一に淡い想いを抱いていた清子が、片足に障害を負ったことで女としての幸せを諦めるという心情にはピンと来なかったけど、周囲の反応からしても当時はそういう認識だったのだろうか。
終戦から弘一の復員を通して、清子が本当は独りだと自覚させられるだけではなく、かつての信頼し合っていた関係が醜い形で変わってしまったのが辛かった。しかし、戦後の女は強かった。ミシン工場でともに働いていた清子を引き抜いて洋裁学院を開設した河野夫人や、進駐軍の日系二世と結婚してアメリカへ旅立とうとする友人の世津子のような目に見える逞しさではないが、幼い頃から培ってきた仕立ての技術と持ち前の勤勉さで心身ともに自立する清子の芯の強さは応援したくなるし、見習いたいものがある。
そして、彼女が諦めていた女性としての幸せ。それを彼女が望むのなら掴み取って欲しいと思う。