
いるかれもん
@reads-dolphin
2026年9月10日

火山のふもとで(新潮文庫)
松家仁之
読み終わった
再読
再読。ブックカバーを外してしまったので若干傷んでしまったけれど、その分手に馴染んだ感じがする。
やっぱりこの本は特別な一冊。
読みながら思わずため息とともに顔を上げてしまうような場面がたくさんあるけれど、とても短くまとめられるようなものじゃない。
「名文」「名言」ではなくて、段落や数ページ単位で書き写したくなる文章が松家さんには多い。ゆっくり、時間をかけて読まないとなかなかこの本を味わい尽くすことはできないと思う。そして、やはりこの文章に憧れてしまう。絶対書けないけれど。それっぽい言葉で読者を煙に巻かず、具体的で明晰で、そしてありふれた言葉で綴られた文章。きっと、一言一句気を抜かずに書かれたのではないかと思う。でも、そんな力身や苦労を全く感じさせない柔らかく、透明で、作品世界と調和するような爽やかな風のような文章と物語。
読み返して思ったのは、軽井沢の高原の空気、若い男女の新鮮な恋愛模様など、とても爽やかな小説だと感じた。初めて読んだ時よりも、自然、建築、人物の一つ一つの描写を丁寧に読み進めた。特に人物の描写について、(結末を知っているからかもしれないけれど)雪子が作品世界と調和したとても魅力的な女性として描かれていることに気がついた。終盤、先生の手紙を読んだときには少し涙が出そうにもなった。
昨日の朝、電車の中で読み終えたものの、まだこの作品世界に浸っていて、他の本は読む気にならない。それくらい幸せ。改めてこの本に出会えたことが幸運だと思う。またどこかで読み返すだろう。
