
kirakirapoppy
@kirakirapoppy
2026年9月10日

ナイルパーチの女子会
柚木麻子
私達を競争に巻き込むものー。
栄利子の言葉を思い出す。あの時は、なんと大げさな、と苦笑したが、それは必ずしも、社会や組織など、強大なものだけではないのかもしれない。ごく身近な場所に居る個人からも発されるものかもしれない。
父が一人で暮らすことはもう不可能。そして、翔子が一緒に住み、つきっきりで過ごすことも不可能。だから、父を受け入れてくれる施設を探し出す。自分はこの街を出て、仕事を見付け一人暮らしと仕送りを始める。もちろん東京に戻るのが理想だが、家賃の高さとここに通う交通費を考えると、かなり厳しいだろう。賢介との関係はどうなるか分からないし、今は彼にだけは甘えるべきではない。絶縁するわけではなく、一月に一度は様子を見に来る。しぶとく、長期戦に持ち込むしかない。かすかに見えている出口の光を宿じて進むしかない。そのためには周囲を味方に付け、巻き込むことを恐れず、絶対に短気を起こしてはならない。こうして危機に瀕した時に粘り強い姿勢を取るために、人は勉強をしたり、仕事を通じて何かを学ぼうとするのだろう。そうした努力を怠ってきた自分に、こんな年齢になっていきなりそれが出来るかどうかは分からない。
その時こそ......。二人が離れていた間、培ってきたスキルが花開くんじゃないのかな。
女の上っ面の慰め合いや愚痴や井戸端会議を、軽蔑したり、莫迦にして笑う男.....、そうだね、女にもよく居るよね。じゃあ遠くで笑うやつらに何が出来るってのよって感じ。
相手の心をえぐって真実を突きつける辛辣さが、人を傷つけないように配慮された言葉よりも高尚だなんて誰が言えるのよ?あの能力はすごいことだと、今なら分かるんだ。
そういうことを莫迦にし続け、面倒くさがってきたせいで今、私は何も持たずにここに居るから・・・
女の一瞬でもその場を楽しくする花火みたいな社交性が、楽天的な調子の良さが、次に繋がらないかもしれない小さな約束が、根本的な解決にはならなくても、実は通りすがりのいろんな人を救っているんじゃないのかな。
