
いの
@ino_to_iimasu
2026年9月11日

夏の約束 (講談社文庫)
藤野千夜
読み終わった
小説
お義父さんが「面白かった」と話していたので、読んでみた。主人公のマルオと恋人のヒカル(どちらも男性)が友人たちとキャンプへ行く予定を立てるも・・というストーリー。今から20年以上前に書かれた小説なので、現在ほど多様性への理解が進んでいない、というかむしろ性的マイノリティーの人たちを過激にネタにする場面も少なくなかった時代。それでも、主人公「マルオ」の、周囲の無知、狭量、愚かさから来る嘲りの視線をまるっと包み込む優しさというか、強さというか、そして遠くに感じさせる悲しさみたいなものに胸を打たれてしまう。それを“赦し”と表現し、「“赦し”を得ている感覚に自分が陥ったとき、自分が大多数の側にいることを自覚し、羞恥してしまう」という解説文に深く納得してしまった。ド派手な事件が起こるわけでもなく、けど生活の中に潜んでいる喜びとか悲しさが繊細に描かれていて、これぞまさに純文学・・みたいな気持ち。
同じく文庫本に収録されている『主婦と交番』も良かった。正直、主人公の父親が何気なく言った「ちゃんとせえよ」という気持ちが分かっちゃうっちゃ分かっちゃうけど、そんな自分をちょっと戒めようと思ったり。交番ウォッチを続ける主人公が「わかんないけど、なんか面白いの」という台詞が、なんか、良かった・・。


