
704h
@704h
2026年9月11日
こうしてイギリスから熊がいなくなりました
ミック・ジャクソン,
田内志文
読み終わった
読み終えた。めちゃくちゃ良かった!
人類からこんなにも愛されながら、こんなにも迫害された動物も珍しい。そんな奇妙な人間と熊の関係を豊かな想像力で語る。イギリスらしい皮肉たっぷりなファンタジー。
熊への愛と哀惜に満ちた8つの物語。なんともイギリスらしい本だと思った。歴史が凝縮しているように感じる。こんな本が日本で作れないか。近いのは『平成たぬき合戦ぽんぽこ』か。
あとがきにもイギリスと動物虐待の歴史が解説されているが、確かにこの本を書いた一つのインスピレーションとしてイギリスの熊たちがいることは確かだけれど、これをイギリスの話と留めてしまうのはとても勿体ない。
道徳の教科書的な毒抜きされた童話に対抗する野心的作品でもあると思うし、人間の精神の深いところにある、自然に対する信仰を現代に何とか甦らせようとする試みのようにも感じる。読者の心の隅で、熊達は今も舟の上でその時を待っているのだ。
ミック・ジャクソンの作品ははじめて読んだが、児童文学や伝承の勘所をよく掴んでいて、短編ながらよく魔法がかかっている。熊が何を考えているかは曖昧にしていて、読者がどこに想像力を使うのか、書くところとあえて書かないところが凄くうまい。読者があまり考えたくないような、残酷なシーンが容赦なく残酷であるのも、もっとやれ!と読者の本音が良く聴こえているからだ。そういう意味で、ミック・ジャクソンは優れた作家である以上に、優れた読者なのだろう。
挿絵は言わずもがなに素晴らしいが、あまりに文章と合っていたので著者が描いているのかと思っていた。あとがきを読んで別人である事に気づいた。優れた物語は運命を引き寄せる力もあるのかもしれない。
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