
まち
@machi_0
2026年9月11日
燻る骨の香り
千早茜
読み終わった
相変わらず読んでいたら匂いがただよってきそう。知らない香りの用語でもすっと入ってくる。沈香って知らないけど、重たくて体にまとわりつくような香りなんだとか、既知の感覚で想像できる。
少年陰陽師が思春期のバイブルだったので、伽羅が出てきてにこにこ。特別な香りなんだね。
前2作ともあの町の洋館が舞台だから、馴染めるかなと思ったけど、あっという間に京都にいる気持ちになった。雨の描写が特に好き。
死んで骨になってまで香る執着、とてもとても刺さった。
実はこの香りシリーズを読み出したのは、なぜか香る妹の骨というあらすじに惹かれたから。買おうと思ったら3部作の最終巻ということで、1巻から読み進めたよ。期待通りの読後感。
真奈の小川朔に対する思いって、男女間のものじゃないよな…と思う。朔にこだわるのは、嗅覚が鋭くて一目置かれる才能を持つ「特別な」妹の「特別」だった自分の地位が、唯一じゃなくなった衝撃も大きかったんじゃないかなーと思った。もちろん朔の雰囲気に惹かれたんだろうけど、同時に、自分が作ったものしか食べられない天才肌の妹が、他人の手作りを食べた瞬間はかなり衝撃だったんじゃないかな。こいつ何者なんだと思うし、同じ世界を共有しているようなふたりに疎外感を抱けばますます執着しそうだし、丹穂と重ねてた部分もあっただろうし。
真奈はずっと、丹穂越しに小川朔を見ていた。丹穂がいなければ、小川朔への特別視はもっと薄まっていたんじゃないかな。だからこそラストで、男の名を知ろうとしたんだと思う。何というか、丹穂に朔を奪われるというより、朔に丹穂を奪われるようで苦しかったのでは……と思うけどどうだろう。丹穂への執着を正しい形で解いたから、朔への特別視も薄れて、男の名前を知りたくなったんじゃないかな。
もっといえば丹穂を通さないと、真奈は自分の価値を感じられなかったんだろうし、丹穂も丹穂で、自分の嗅覚をずっと昔から理解してくれる真奈がいなくなるなんて絶対いやだったんだろうな。忘れさせまいと香木を飲み込んで、骨になる瞬間に記憶に刻みつけてやるという執着、めちゃくちゃ好きだ。家中に香り袋を仕込んで嗅覚順応させてまで逃したくないという気持ち。愛って呼んじゃだめかなあ。執着かなあ。
丹穂と朔の特別な関係にもやもやしてた真奈も、男に抱かれた真奈と数日は目も合わせない丹穂も、もうずっと互いに執着しているという意味で相思相愛だったね。執着し合う関係性って愛とは別でまた好きな関係性なので、語り出すと止まらない。
真奈と丹穂と朔の三角関係よりも、真奈と丹穂の執着にたまたま巻き込まれた朔という構図を強く感じるのは都合よく考えすぎですか。
とにかく真奈と丹穂の関係性が美しすぎました。そしてその決着も……。
あと相伝の香がなくても、社長として真奈と矢萩さんがうまくやっていけてるのが、垣間見える最後も良かった。先代の子供たちがみんな家を好きになれなくて、最後は婿入りの父と娘にぜんぶ背負わせる形になったのはしんどすぎてどうなることかと思ったけど、相伝の香という伝統を破ったからこそ、いい意味で新しい風が瑞雲堂に吹いたのかな。てかさすがに代替わりしてるよね!?笑 突飛すぎ?
また千早茜さんの作品読みたいな。
