ななり "群像 2026年 7月号" 2026年9月12日

ななり
ななり
@bluebook_mark
2026年9月12日
群像 2026年 7月号
「お疲れのところはございますか?」石田夏穂 マッサージ師の主人公が、自分のやりたい施術と職場や客の求める施術のズレの中でおぼえる葛藤は、様々な労働の中で日々起きている普遍的なものです。そして読みながら思ったのは、ここに描かれているのは最近の小説を巡る書き手と読み手のズレでもあるのではないかということです。反射区表(このツボを押したらどこに効くかが書かれている図)の恣意的なマッピングに懐疑的な主人公は《足裏マッサージは足裏マッサージであって、それ以上でもそれ以下でもない。たとえば脳には脳の専門家がいて、目には目の専門家がいて、胃には胃の専門家がいるのに》と思う。私はこの部分に、専門書とは別に小説が社会的なあらゆる問題を読み手から背負わされている今を見てしまう。さらに物語の中では経営が変わったことで、優しい施術が推奨されることになるのだけれど、これも何だか最近の“優しい小説”が喜ばれる風潮に見えなくもない。痛かろうが終わった時に気持ちよければマッサージはそれだけで意味があるように、つらい場面や嫌な人物が出てこようとも、最後に面白かったと思えるならば、小説にそれ以上求めることがあるだろうか。プロアマの小説家、あるいはデビューを目指す人達には、求められるものよりも書きたいことを書くというスタイルをどうか守り続けて欲しいと私は思う。
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