Tomy "笑う森" 2026年9月12日

Tomy
Tomy
@books_tomy
2026年9月12日
笑う森
笑う森
荻原浩
面白かった〜 森で1週間もの間迷子になっていたASD児の真人が発見される場面から物語はスタート。 母親の岬や叔父の冬也が森で何があったか聞いても答えてくれない(答えられない)真人。5歳の子供がどうやって1週間も森で生き延びることができたのかという謎を解明していくのが物語の大きな流れ。 小説の構成としては、森の中で迷子になった真人が4人の大人と出会っていく過程を書いた過去と、無事帰宅できた真人が森での出来事を思わせる言動をする現在とが交互に描かれていて、冬也の調査によって真人の言動や発見時の持ち物などの伏線が回収されていく様が謎解きのよう。よく練られたプロットが見事で物語に引き込まれていく。 森の中で出会った4人の大人たちはそれぞれ一癖も二癖もあり、一様に自分勝手で自己中心的。そしてそれぞれ自分で蒔いた種により(程度の差こそあれ)人生の岐路に立ったことで森に辿り着いてしまった人たち。 森の中の4人やそれ以外の登場人物も人間の汚い部分、醜い部分をまざまざと見せつけてくるんだけれど、愚かさゆえの滑稽さというか愛おしさというか、どこか憎みきれない部分があったり、どうしようもない背景を抱えていたりして荻原浩の人物描写の巧さが際立つ。 誹謗中傷だったり自己正当化する心理だったり、これだけヒトの嫌な部分を見せつけられるのに読後感が爽快で温かい穏やかな気持ちになるのは著者の素晴らしい筆力があればこそ。 ラストで判明する真人の森での最後の出会いについては賛否が分かれるかもしれないけれど、私はこういうの嫌いじゃない。物語なんだからいいじゃない非現実的でも。 物語の最後で真人の成長が感じられて心がじんわり温かくなった。 普段ミステリを多く読んでる人が、たまには心が温まる物語を読みたい気持ちになった時にオススメしたい一冊。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved