
semi
@hirakegoma
2025年4月6日

傷を愛せるか 増補新版
宮地尚子
読み終わった
「トラウマ研究はいつから、戦っても傷つかない人間をふやすための学問になったのだろう」
精神科医、研究者といった専門家として過ごされる中で感じられたこの疑問が、一貫した思いを象徴されている気がした。
収録されているエッセイはどの話も平易な文体で、誠実な印象を受ける。
日々の生活は成長、強さ、ポジティブな物語の中で進んでいて、取りこぼしてしまうものたち。それを丁寧に掬いあげて感じさせる。
淡い味わいのある文章に、終始惹きつけられた。
「弱さを抱えたままの強さ」を目指すこと。
傷をかかえたまま生きて行くこと。
傷につくかさぶたを、剥がさずにこらえておけば、いつか健康な皮膚が出てくるのだろうか。
わからないけど、傷のまま、傷があっても良いか、と思えてくる。
何度も読み返したくなる本だった。