
semi
@hirakegoma
2025年11月12日
苦役列車
西村賢太
読みたい
読み終わった
苦役列車は読んでる間も、後味も、良い印象の小説ではなかった。
自分自身、読後はしばらく影響されたのか、他人に対して粗暴な態度を取ったり、怒りと妬みの感情がいつもよりも湧き上がっていた気もする。
ただし、それくらい人をのめり込ませる小説だとも言える。読んだ方は小説としての密度を認めるだろう。
文庫版に収録されている「落ちぶれて袖に涙のかかる」は非常に良い。文章のリズム、ダメさの曝け出し方のバランスがよく、割と気分悪くもならず、確かな技量に裏打ちされた文章を味わえる。
ペシミスティックでバイオレンスな考えも、貫多が腰の痛みに耐え、「ヒョコタン」「ヒョコヒョコ」と動く様子に打ち消される。ダメさ加減も笑いに変える柔らかさを感じる小説。著者の技量と余裕を感じる。