チョム "巨匠とマルガリータ" 2026年9月13日

チョム
チョム
@abb_20260521
2026年9月13日
巨匠とマルガリータ
巨匠とマルガリータ
ミハイル・ブルガーコフ,
石井信介
同著者の『犬の心臓』を読んだことがあり、社会風刺と荒唐無稽、不条理、なんかそんな感じの作風でなかなかドタバタした物語の人という印象があった。歴史や社会経済等に疎く風刺的な面は理解できずとも物語として楽しめたという記憶。 装丁イラストがかわいらしいネコちゃん、なかなかのページ数、タイトルの二人はどんな人物でどんな関係なのか、その他もろもろに惹かれ購入。 第一章の題が「見知らぬ人とは話をするな」などという、なんとも……なんというか古典文学にはあまりなさそうな(古典文学に精通しているわけではないが)題で、しかもその「見知らぬ人」が突然語り出したキリストの話?がひとつの章として差し込まれ、現在の時間軸に戻ってきたと思ったらかなりサスペンスじみた展開になり、凄惨な事件に目を覆いたくなって(脳内で想像しながら読んでいるので目を覆っても文字が追えなくなるだけだが)、ここまでに魅力的な登場人物が出てくるわけでもなく、なかなかどうして今後読み進めていくのにげっそりしてしまうような内容。 それでも「巨匠」と「マルガリータ」に会いたい一心で必死に物語展開を追っていくも、きっと表紙のネコちゃんのモデルなのに全然かわいくなくて丁寧な言葉遣いで支離滅裂なことしか言わない太っちょのベゲモトやいちいち鼻につく態度のコロビエフ、最初からやべ〜やつすぎたウォーランドが起こす問題にいちいちイライラしたり、彼らに振り回される市民をかわいそうだな〜と外野から眺めたりして、だいぶ体力を削られながら半分を読み終えたころにやっとマルガリータが出てきてくれた。「主人公登場」の章で巨匠が初めて登場するが、本作の主人公は絶対にマルガリータだと思っている。 前半で悪魔たちにずっとイライラしていたが、マルガリータが悪魔たちと不思議な夜を過ごしているあいだは不思議と彼らのことを物語のレギュラーキャラクターのようないわゆる主人公側の人物たちのように感じ、なかなか憎めなくなるのであった。とくにゲーラに関してはだいぶいい女だった。 印象深かったのは、演芸場に甚大な被害を及ぼした悪魔側であるアザゼロが演芸場の総務部長ワレヌーハを居留守を使うサボり魔から「《父親のような恩人》」と呼ばれるまでの善人に変えてしまったこと。 「電話が鳴ると、ワレヌーハはすぐに受話器を取り、『もしもし、だれに用事ですか? ワレヌーハですか? 彼はいませんよ。外出中です』といった具合に居留守を使っていた。」(p197) 「電話をおもちゃにするな。電話でウソをつくな。分かったか? もうやらないな?」(p548) 「彼は劇場の管理者の間ですら信じられないほどの思いやりと礼儀正しさを発揮するようになり、だれからも慕われ、愛される人間に変わった。(中略)いつだれがバラエティ演芸場に電話しても、必ず『ご要件を承ります』というソフトな、だがさびしげな声が受話器から返ってくるのを聞くことができた。」(p724) 悪魔たちに関わって無事に生存したうえ元の地位を失わなかった唯一といっていい人物であるうえ、悪魔の手下に改心させられたというのがなかなかおもろい。 巻末の翻訳メモには本作の楽しみ方のヒントがいろいろ書き連ねられているが、作品の魅力を十分に味わうための理解力と知識を補うにはわたし自身の頭が弱すぎたゆえ、二回目をもってしてもきちんと味わえていない感じがある。 翻訳メモ内の「名言または気の利いたせりふ」(p750-752)はかなりおもしろかった。
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