
ヨムヨム
@psykhee
2026年9月13日
あなたの人生の物語
テッド・チャン,
浅倉久志
読み終わった
再読
@ 自宅
久しぶりに再読。二作目『息吹』より難解なイメージがあったが、今回の再読でもその印象は変わらず。あちらは「自由意志」をテーマに扱っていると感じ、こちらはより根源劇な、「論理」や「言語」についての作品が多かった印象。それぞれの感想を書く。
◯バビロンの塔
この短編集の中では異端に感じる作品。途中、天体とこのバビロンの塔の関係が明らかになっていくシーンに興奮した。高所恐怖症ぎみの私にとってはこの塔を登るのは絶対無理…。
◯理解
一番尖っていると感じた。『アルジャーノンに花束を』をもちろん連想させるが、あちらがある程度賢い上限までの表現だったのに対してこちらは指数関数的に(?)賢さが上限突破していくようなもの。作者の認識能力の高さに驚く。
◯ゼロで割る
何を信じればいいのかの話のように感じた。ひいては、自由意志の存在に対する問いかけのテーマ。
◯あなたの人生の物語
やっぱり、素晴らしい。今回、結末をわかっている状態での再読は、まさにこのヘプタポッドBの習熟と対応づいており、まさに変分原理、すなわち結末がわかっていいるうえでどういう経路をたどるかに投射できることが面白かった。
◯七十二文字
人類があと5世代で死に絶えることがわかった世界、というのが刺激的。そのうえで至った結論がこの世界のDNAモデルというのが新鮮。ただ、もうちょっと展開というか回収というかをしてほしかった印象。この後どうなるかを知りたい。なお、自己複製可能な名辞というのは、まさに、AIがAIを進化させるシンギュラリティそのものであることに気づきちょっとゾッとした。
◯人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化
普通知能を持つ我々は超知能を正しく超知能であると認識・評価できるのだろうか?
◯地獄とは神の不在なり
「天使」を「現象」として捉えるという発想がすごい。主人公ニールにとっては救いがないように感じるが、そういった人間個人の感情に全く配慮しない、それが超越的存在ということなのかもしれない。
◯顔の美醜について
現代のルッキズム問題を切り取っている。これが書かれたのが20年以上前であることに驚き。個人的には、カリーはあまり承服しがたいと感じるのであるが、それは論理的態度ではないという気もする。つまり、人は私も含めて論理的ではなく、そのため優劣をつけたり好き嫌いを生じてしまうことの正しくなさ、ままならなさを再認識させられた。


