
紫香楽
@sgrk
2026年9月14日
地図と拳 下
小川哲
読み終わった
面白かった!
歴史物ってやっぱ歴史物をやることで描きたい部分があると思うんだけど、それを効果的に描くにはただ史実そのままだと物語表現としては効果的に描ききれないところが大きいと思っていて、そのために捏造するのも手ではあるけど、やはり捏造するってのは歴史小説としては元になった人たちや出来事に対してどうなのか…?というところで、描きたい要素を中心に組み直して創作小説にする、というのは史実に真摯であり、創作に誠実である手法でいいなと読み終えて改めて思った。
ただ創作の歴史なのではなく、史実で実際にあった事件や出来事を軸に組み直すことでその時代実際にあった問題や(日本人には)無視されている感情などが効果的に伝わるよう組み上げているというのがよい。
ただ本当に大変なのだろうことは参考文献の冊数を見てもわかる……
自分にできる気はせん
人の感想を少し見たんだけど、「小川哲さんは賢いが故に諦めててダメ」と言っているものがあって、まあそれは……それは確かにそうではある……という感じだった。
けどまあそこは現在〜未来の話ではないからいいんじゃないかなとも思っていて、この小説で史実においてそういう迫害や日本人の横暴があった、戦争に向かったり正当化してしまったり立ち止まらないことを正当化する思考があった、みたいなことを読者が知ることは、世の流れや未来を変える可能性の一端になるのではないか? 小川哲さんはこの小説でそういう可能性の芽を撒きたかったのではないか? と思った。
まあ出て数年でここまで情勢が悪化するとは思ってなかったと思うんだけど(遅かれ早かれこういう方向になるということ自体はわかってただろうとも思うけども)。
その感想だと賢いから人間を諦めており希望が描けないと言われていて、まあそれは否定しないのだが、読んだ人がどうにかなるかも、というのも希望のひとつなのではないのかなと思った。
内容の話だけど細川はあくまで日本だけのことを考えていて、明男は人間全体のことを考えているという違いが最後に明らかになるのが面白かったな。
最初の高木の細川評から話が進むにつれどんどん細川が異常人だと明らかになっていく感じオモロい。
高木が上巻半ばで死んで「おまえ主人公じゃなかったんかい!?」になるのもおもしろい。
「言語化するための小説思考」でかなり小手先の技術な話がされているのだが、この本での参考文献の数と頭の良さを見せつけられ、この地力があるならまあそりゃ小手先の話なんてなんぼ外に出しても困んないよなと思いました。
すごい作家だ…
もう少し他の作品も読んでみたくなった

