
あんどん書房
@andn
2026年9月13日
ロッコク・キッチン
川内有緒
読み終わった
国道6号線(ロッコク)沿いに広がる、原発事故の被災地域。避難指示が解除された町に戻ってきた人や、震災後に移住してきた人たち。彼らの生活を「食」を通して描き出そうというのが本書を含む「ロッコク・キッチン・プロジェクト」。
プロジェクトの柱になっているのが、地域に住む人々から募ったエッセイ集、そして現地に暮らす人々を取材したドキュメンタリー映画、そしてその取材を川内さんの視点から綴った本書ということらしい。
川内さんの著書は今回が初めてだが、ノンフィクションとしてはかなり主観的というか、著者の個人的なことを書いているなと思う。立場もはっきりしている。それが取材で取り上げる人たちとの真摯な関わり方につながっているのだろうなと思う。
印象的だった場面をいくつか。
まずは二章、インド出身で双葉町に移住したスワスティカさんへのインタビュー。母の味であるチャイをめぐる話の中で、認知症の祖父が何度もチャイを求める姿を描いた自作の詩の朗読が挿入される。ここはものすごく透き通ったような、厳かな気持ちになった。
一方で元第二原発所長、復興会社代表の方が出てくる章は最も緊張感があった。立場的に絶対に言えないことがあるのだろうなぁと。
終盤に登場するのは、昼間は原発内で板金の仕事をし、夜は更地になった祖母の家で本屋を営む男性。
焚き火を囲んだ写真は映画版のメインビジュアルにもなっているとても良い一枚だ。
“六〇年代からロッコクの沿道には発電所が次々と建設され、首都圏までエネルギーを運び、日本の経済を支えてきた。つまりロッコクの四〇年は「光を求め続ける歴史」そのものだった。
人類が光を求め続けた先にあったのが、この暗闇の地だ。”(P268)
ちょうど高校受験が終わって入学式前のころに発生した東日本大震災。当時のTwitterに一日中張り付いて、流れてくる悲惨な情報をただただ眺めていたことを覚えている。
当時の自分にとっては地震や津波のインパクトが強く、原発事故については結局あまり知らないまま15年も経ってしまっていた。
それだから、少し考えれば分かるような、原発事故のため立ち入り禁止になった区域では亡くなられた方の遺体が未だ確認できず放置されている…といったことも本書を読んで初めて気付かされたのだった。
本書を読んでいる最中にもまた浜岡原発をめぐる様々なドタバタが報道されていたのだが、なんというかもう、人類は核を扱うには未熟すぎるんじゃないかと思うな。
本文書体:筑紫明朝
写真:一之瀬ちひろ
装幀:鈴木千佳子


