ケイ "二月のつぎに七月が" 2026年9月15日

ケイ
ケイ
@flyingkei
2026年9月15日
二月のつぎに七月が
252〜290ページ 親しい人の死をめぐる記憶。日常を断ち切るように訪れる死、知らぬ間に彼我を分けていた死。大切に取り上げた骨の記憶、埋める人とてなく捨て置かれた骨の記憶。死は当事者にとっては終着点となるが、周囲の人びとにとっては人生の途中で背負うべき痛みであり、場合によっては悔恨である。 判で押したような毎日を送っていた阿見さんは、背骨を痛めたことをきっかけに、いちば食堂以外での人との交流を得る。そもそも、背骨を痛めたきっかけ自体が、阿見さんから声を掛けた子どもたちとの出会いである。そしてまた戻ったいちば食堂で、阿見さんは他の客の会話に耳を傾け、心で同意する。声を出して会話に加わらずとも、阿見さんはすでに、この食堂での人の輪の中に心の内で参加している。 父の遺した文庫本(戦前発行の全八冊の日記文学ということで、ほぼ間違いなくアミエルの『日記』)を開いては抜書きし、回想の中に没入していた阿見さんは、父を経由して読む他人の日記に共感し触発されて沸き起こる記憶の中の人びととのやり取りを重ねるうちに、知らず知らず世界を、視界を広げて、渦を巻くじょうごの中で立ち位置を変え始めているようだ。
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