
和月
@wanotsuki
2026年9月16日
何も起きない夜日記
月と文社
読み終わった
「さえない平日の夜や、闇落ちしそうな日々を乗り切りたいとき、本書を手に取っていただければ幸いです。」
正に今だ!と思った。
ちょうど毎日の仕事や生活に打ちのめされていた平日。砂漠の中のオアシスを見つけたような感覚がして、このタイミングで出会えたことが本当に嬉しかった。
17人の平日の夜について。年齢も職業もばらばらな人々が、日記のようなエッセイで自らの日常を綴っていく。
人に見せる日記は、実際に書く日記よりも少し上澄みというか、体裁を整えたものが多いような気がする。しかし本書は、自分の思考や生活の切実さを深掘りながら言葉を紡いでいる文章が多く、内側を向いている感覚が心地よかった。
今の日本を生きている人で、何の不安もなく毎日ハッピー!みたいな思考を持てる人間はすごく稀なのだと思う。このまま暮らしていけるだろうか、という不安は終始付き纏う。
それでも大体の場合生活は続くし、食べて、働いて、寝たら次の「今日」が始まる。鬱々とした感情やぐるぐると渦巻く思考と折合いをつけながら、どうにか生きている。
その晴れでも雨でもない曇りみたいな日常を文章にした作品のように感じた。
ひとつひとつが短く読みやすい。
どの文章も好きだが、【〈友〉についての書簡】は視座に個性があって言葉選びが良い。安心をあたえてくれる存在を友と呼ぶ、著者の感性が本当に素敵。
【“いい子”の私を脱ぎ捨てて】は世代が似ていることもありすごくすごく共感した。特にこの一節。
「私には結婚願望がない、というか、結婚しなくても結構楽しく生きていけるんじゃないかと思っている。(中略)なのに、知り合いの結婚報告を受けてこんなにもたじろいでいる私は一体何なのだろう。」
とても分かる。この焦りや不安の中でも自分の機嫌をとるのが上手い著者を見ていると、もう一人の自分を見ているような感覚がした。私も同じだよ!と声をかけたくなる文章だった。
それぞれの文章の後ろについている質問コーナーも良かった。読み終えてから、自分だったらどう答えるかを日記の後ろに書いてみたりした。とても楽しいのでオススメです。
先に刊行されていた『私の孤独な日曜日』は未読なので、絶対読みたいと思う。


