鱗拾い
@urokohiroi
2026年9月17日

読み終わった
再読了
『丕緒の鳥』が民の話なら、こちらはもっと王の近く、言うなれば、王を思う者たちの話。
●「冬栄」
「『でもってぼくは、正頼が戻るまでに、いっぱい悪戯をしておくんだね』(中略)
『そうです。潭翠たちをうんと困らせてやるんですよ』(中略)
『潭翠がかんかんになるような悪戯をするんだね』
『頑張ってくださいまし。そうしたらじいやが、戻りしだい、園林(にわ)の木に吊るして差しあげますから』」
な〜〜にその海外の子どもの本みたいな素敵なやり取り!!!!
この後のこととか考えたくなくなっちゃう、、
でも見届けますよ今度こそね(白銀で挫折した前科あり)
●「乗月」
「『よく、そんなつもりじゃなかった、とか、そんな大事だとは思わなかった、と私たちは言うわけですけど、罪の重さを知らずにいること自体、それがひとつの罪なんじゃないかな』」
祥瓊に縁のある話でこのセリフ重いよぅ……
月渓、王を諫められなかったことをずっと悔いてた人だから、祥瓊が公主としての自分の悪かったところを分かってくれて、変わってくれて、嬉しかっただろうなぁ。
自覚と悔いによって罪は許されることもあると思いたい月渓にとっての、ある種希望みたいな立ち位置にあの祥瓊が来るなんて……立派になって……
●「書簡」
「『辛く感じないんじゃない、辛い気分を乗り越える方法を知っているだけのことだと思う』」
鈴が慶へ送り出されたときに言われてたこととも通じるな〜。
苦痛を忘れる努力、幸せになろうとする努力、それだけが……ってやつ。
連想ゲームみたいだけど、こういう通底してそうなテーマが見つかるのも本読んでる〜!って感じがして楽しいんだ。
とか思ってたらですよ↓
●「華胥」
ここまでの話で書かれてきたテーマてんこ盛りじゃなかったですか!?
テーマっていう言い方が微妙すぎて、もっとドンピシャな表現を見つけたいところだけれども、こういうののことを言っている↓
・過ちを認められない→『東の海神〜』斡由
・友なのに弱音を吐けない→『書簡』陽子と楽俊(これはだいぶ質感が違うけれども)
・自分を信じられないから、きっと相手からもがっかりされていると思う→『冬栄』泰麒
・王への思慕と憎悪に引き裂かれる者→『乗月』月渓
・罪に問われても恥じず、罰されても悔い改めない者→『落照の獄』狩獺
・王がいなくなっても昇山しないと言う者→『図南の翼』珠晶の父 ほか
・本質を考えずに誰かと同じこと/逆のことをする→『図南の翼』室季和
最初は「なんかこの王さま斡由に似てる……斡由が王になってたらこうなってたみたいな話かなぁ……」ぐらいだったのが、「こういう人、前にもいた……こういう人も……」と記憶が呼び起こされまくって終始ゾクゾクしていた。
そしてそのほとんどがよくない風に噛み合って破滅へ向かっていくの、いっそ芸術的ですらある。
責難は成事にあらず。
青喜による解釈まで読んで本当にその通りだと思ったし、その後の慎思の「そういう責め方をしてはいけません。人も自分も」で対象が自分の過ちにまで広がるのが敵わないと思った。
もし答えを知ろうとしないで自分を責めるだけになったら、私が一巻からこすり続けている「自分を卑下して満足する」に近しくなってしまうよなぁ、とか。
そして最後のセリフで一連の連想ゲームが時を越えて円環のように繋がってしまい全身鳥肌が立った。
そうかあの人か……どうりで含蓄が……
でもでもあの人も答えがわからなかった・王に答えをあげられなかった一人なんだよね……?
となると、答えがわかるのが王なんじゃなくて、答えのない問いを考え続けられるのが王……?
重たい重たい話だけど、ミステリーじゃないシリーズのミステリー回みたいな雰囲気は好き。
ファンタジーアイテムが関わる謎なのもあって、しゃばけの鬱回とか読みたくなってしまった。
青喜最初ちょっと疑っててごめん。
●「帰山」
そことそこがその関係性なのちょっと完成度が高すぎません?
それはともかく、何百年と続いた王朝でも(否、寿命で区切られず何百年も続くからこそか)ある日フッと王が飽きてしまったら王も国も終わりっていうのがはちゃめちゃに怖い。
誰も死んでないのに「華胥」より陰惨な気持ちになった。