powder0311
@powder0311
2026年9月18日
海とサルデーニャ
D.H.ロレンス,
武藤浩史
読み終わった
石垣島へ旅行に行った帰りに読み終わった。単純な礼讃だけじゃない。喜び、落胆、怒り、驚き……この手の旅行記の中には、アウトサイダーたる自分が現地の人の本質を見抜いたと誇る密かな「俺/私は鋭い目を持っているマウント」があったりするもんだけど、ロレンスはそれをとどめる。厳しく鍛え上げられた文章。素朴に書かれた文章ではなく、素朴になった文章。だから旅の総括なんてしない。振り返ったりしない。サルデーニャを離れシチリアの自宅に戻る最終章のタイトルが「帰る」なのが、とても良い。また訳文もかなり「ひらいて(漢字で書かずひらがなで書くこと)」いるのもいい。
ふたたび自分が現実の活動的世界に、旧秩序の真珠を溶かす発泡ワインのような大気のなかにもどったことを知る。読者諸賢、この喩え、お気に召されたか。(……)人間はものの一時間で自分の魂を変えてしまう。(……)じつに堅固な僕のサルデーニャ魂が溶けだしていって、自分が水蒸気に、これぞ真のイタリアたる不確実性、瞬間性と化すのを感じた。