サブレとポッポの往復書簡 "生命式" 2026年9月19日

生命式
生命式
村田沙耶香
まるで、現実世界で常識とされている視点や価値観の在り方について『本当にそれは正しいのか?』と、読んでる間ずっと問われ続けられているかのようでした。 作品全体が、現代の常識に対するアンチテーゼとでもいうのでしょうか。これまで疑問にも持たなかった様々な事柄に対しても、右へ倣えと思考停止せず『いや、本当にこれで良いのか?』と、一度は疑う視点を、自分がかなり以前から持っていることは自覚していましたが、村田沙耶香さんの作品に触れてからは、よりその思いを強く抱くようになったかのように思います。 収録作品の中では『魔法のからだ』での、性にまつわる彼是をタブーとも戯れ事ともせず、心身の成長過程として純粋に捉えることが出来る詩穂の描かれ方に。そして『二人家族』の芳子と菊枝が持っている、周囲の表面的な見方などでは揺るがない、確固とした価値観に対して、特に共感を覚えました。 また、この本の最後のお話『孵化』の主人公ハルカの描かれ方は、まるで『世界99』の空子の生き方を彷彿とさせるかのようなものでした。 それでも、人は誰しもが周囲に合わせて何かしらのペルソナを複数使い分けながら生きているものだから、ハルカの選んだ生き方も、そしてマサシとの結末も、決して他人事ではないと思います。
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