
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月2日
月の影 影の海(上) 十二国記
小野不由美
読み終わった
感想
再読
新刊『幽冥の岸』の発売に備えて再読。
前回読んだときは初読の勢いに任せて一気に下巻まで駆け抜けたのだが、改めてじっくりと読み返すと、十二国の世界へ来る前の陽子は本当に普通の少女だったのだな、といささか新鮮な気持ちになる(シリーズを後半へと読み進めてゆくにつれ、名君への道を一歩ずつ堅実に進んでいるという印象に上書きされていったので)。
親の顔色を伺い、クラス内でのいじめに積極的に加担まではせずとも、いじめられている子を助けることはしない、そんなどこにでもいる高校生。陽子を見ていると、「ひとは変わることができる」というのがこのシリーズのひとつのメッセージであるように感じる。
もちろん、麒麟が失道するとそのまま沈む王朝が多いことからも明らかなように、誰もが変わることができるわけではない。それでも、自分自身の努力と選択の積み重ね次第で、やはりひとは変わることもできるのだ。
切羽詰まった状況下とはいえ、陽子を迎えに来た景麒は言葉足らずで、訳も分からぬまま異世界に連れてこられた陽子が放り出された環境はあまりに苛酷だ。命を脅かされながらも陽子が強く抱き続けた「帰りたい」という意志。その想いこそが、やがて陽子が国から逃げるしかなかった慶の民の心情を慮り、よき王へと変わってゆく一助となったのだろう。
自身がこれだけ「帰りたい」と願った故国を喪うことと引き換えに、故国を追われた慶の民の暮らしの責任を負う王座に就く。陽子は本当に、尊敬に値するヒロインだ。







