ユメ "月の影 影の海(下) 十二国..." 2026年9月3日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月3日
月の影 影の海(下) 十二国記
上巻でひとに裏切られ続けて人間不信に陥っていた陽子が、善良な楽俊と出会って助けられたことで、自らを見つめ直すくだりには本当に胸を打たれる。 『十二国記』という物語には心に残る台詞・文章が豊かに散りばめられているのだが、このときの「陽子自身が人を信じることと、人が陽子を裏切ることは何の関係もないはずだ。陽子自身が優しいことと他者が陽子に優しいことは、何の関係もないはずなのに」という言葉は、個人的にシリーズ屈指の好きな文章だ。 ひとはつい見返りを求めてしまいがちな生き物だけれど、あれだけ苛酷で理不尽な目に遭いながらも、胸を張って生きようと自分を正せる陽子はとても格好いいし、陽子にそう思わせる楽俊も凄い。 陽子が景王だと判明していちどは恭しい態度を取ろうとした楽俊の、「……おいらには三歩だ」も名台詞。陽子と楽俊の友情がシリーズを通して変わらず続いてゆくことに、何度温かなものをもらったことだろう。 延王、延麒と面会し、慶の民のために王座に就いてほしいと請われてからも、悩みに悩んでなかなか決断できないのも、陽子の好きなところだ。ただ権力を欲する者より、民の生命を背負う責任の重さに対して誠実に葛藤する者の方が、王としての器量を備えているように思う。 私は『十二国記』の登場人物の中で尚隆がいちばん好きなので、延王の初登場シーンの格好よさと破天荒さには、久々に読み返してもやはり胸が躍った。
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