
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月5日
魔性の子 十二国記
小野不由美
読み終わった
感想
再読
私は『十二国記』の世界に『月の影 影の海』→『魔性の子』→『風の海 迷宮の岸』という順番で入ったので、今回の再読も同じ順番で読んだ。私にとってはそれがベストな順序だったと思っているが、きっと読者の数だけ正解があるのだろう。
この三作で、選ばれし者(王)の苦悩、選ばれざる者(人間)の苦悩、選ぶ者(麒麟)の苦悩、それぞれが手に取るように描かれていて、いずれにも感情移入させてくれるのが本当に見事だなと思う。
本書は高里という特別な少年の物語であると同時に、広瀬という青年——私たちと同じ、その他大勢の選ばれざる人間の物語でもある。
広瀬は過去に臨死体験をしたことから自身を「故国喪失者」であると信じており、同じく「ここではない場所」にいた経験のある高里にシンパシーを抱く。だが、結局のところ広瀬は悲しいまでに、この現実世界を生きる普通の人間にすぎない。
本が好きなひとなら、若かりし頃、物語の世界から迎えが来ることを夢想したことがあるひとも少なくないのではないだろうか。広瀬のように「自分には帰るべき場所がある」と信じていたわけではなくとも、私にもそんな夢を見ていた時期があった。
だから、広瀬のエゴがいくら醜くとも、この結末——高里と広瀬の運命の別れ方には胸を痛めてしまうのだ。『白銀の墟 玄の月』まで物語を読み終えている身としては、泰麒が帰還できたことを心から嬉しくも思うのに。
「それでも人は現実の中で生きていかなきゃならないんだ」という後藤の言葉を、いつか広瀬が飲みこめることを、自戒をこめて願わずにはいられない。







