やん "海と毒薬" 2023年11月24日

やん
やん
@grilledyangyang
2023年11月24日
海と毒薬
海と毒薬
遠藤周作,
駒井哲郎
こちら、先週出張した際、朝の新幹線で読了しまして。 口角下制筋と下唇下制筋に力が入った状態で、目を細めながら読み終わり、心がつらーい状態で現地入りしたことをご報告します。 気分が落ちているのに、どんどん読み進めちゃうんですよね。なんで? ドM? 第一章の手術シーンがさぁ、めっちゃ痛そうでさぁ。本なのに顔を遠ざけて、薄目で読むって体験を初めてしたかも。マジで唇が「いーー」ってなるくらい生々しい患者の意識に放り投げられた感覚。これぞ巨匠の筆力よ。 第二章では二人の手記が出てきて、もう胸糞でイライラ。看護婦はマジで無理。戸田も腹立つわー。 と思って読んでいたんだけど、二人とも単純な極悪人ではないんだ。 戸田なんかは、自分自身の性(さが)を冷静に内省した上で実験に臨んでいる。その姿勢はすごいな、と純粋に思う。 ラストのおやじが「こいつは患者じゃない」と叫んだ場面、なんか絶望感が半端なかった。 悔しいんだろうな、すべてに諦めたんだな。 勝呂もまた、運命に諦めてしまったんだなぁ。 『海と毒薬』は「日本人の罪意識」を描いた作品だとよく言われるけど、これ、日本人だけの話じゃないと思う。 『沈黙』でも海は運命を暗示するような描写があったけど、運命や環境、組織の空気や同調圧力に飲まれてしまうこと自体は、どこの人間社会でも起こり得る。その中でも倫理の側に立ち続けられる人間は、むしろ稀なんじゃないか。 人はいつでも、酷いことをする側に立ててしまう。 これは戦争や医療の話だけじゃなく、児童や障害者への虐待のような問題にもつながる得る。 でも、そうした行為をする人間は、決して最初から「悪人」だったわけではない。 「自分はあいつらとは違う」と思った瞬間に、もう危ないのかも知れない。こうした優越感と人間の弱さは『沈黙』でも描かれていたが、遠藤周作はそうした日本とヨーロッパ、日本独自の宗教観とカトリックとの隔たりを常に感じていたのかも知れない。 あとさ、私はずっとあの続きがエピローグに来ると思って読んでたんよ。後日談というか、戦中とプロローグの中間期が気になるんよ!!勝呂はどんな生き方をしてきたのか!! 続編かスピンオフないの!?読みたい読みたい気になるぅ......読者の想像欲を引き出す天才か??? ……と思ってたら、なんと『悲しみの歌』というほぼ続編があるらしい。 これは読まなくては。 ちなみに、私が読んだのは角川文庫版なんですが、この青一色に本文の一節が書いてる版の表紙が好きです。
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