
kohhee
@kohhee
2026年9月20日
ユニヴァーサル野球協会
ロバート・クーヴァー,
越川芳明
読み終わった
主人公は空想の野球リーグ運営をひとりでシコシコしてる変なおっさんなんだけど、なんかかっこいいんだよな。どっかで見たことあるよなあと思ったら、ブレイキング・バッドの主人公の感じだなあって。
まあこの小説の主人公ヘンリーは、趣味に没頭するあまり仕事や友人を失ってしまって、最後には正常な自我をも失ってしまうみたいな展開になるので、別に成功してるわけじゃないんだけど、なんかかっこよさがある。
でもそう書いてて思ったけど、ヘンリーが失ったものって本当はくだらないものというか、社会的に見ると「仕事も友人も失った」みたいになるんだけど、描かれている過程を見ると、やりがいを一切感じれないのにいけ好かない上司にこき下ろされながらやる「仕事」と、親切そうに振る舞っているけど実はこっちを下に見てる「友人」を失っただけ。
それでもヘンリー自身もその社会的な立場が悪化していくことに苦悩はしてて、6章の冒頭の「いい齢して子供のおもちゃを弄んでいるなんて人生を間違えてるんじゃないか」という自己嫌悪は、「趣味」を持っている人間として痛切に共感してしまった。
しかしヘンリーはそういう自我さえも失って、最後には自身の産み出した架空の野球リーグ『ユニヴァーサル野球協会』そのものになっちゃう。でもこれはこれで一種のハッピーエンドというか、まあ幸福の形ではあるよなあとはおもった。
社会が要請・奨励する「正しい人間」像が産み出す欲望や虚栄やへりくだり・蔑み・煩わしさから、ある意味で解放されていくヘンリーの姿は一種の解脱のようで、途中の自己嫌悪に共感してしまった身としては、憧れや羨ましさを感じる部分もあった。
ここまで没頭すること自体がある種の才能だという意味では、そんな才能さえない自分の身の救えなさに悲しくもなりつつ、まあしょうがないので「社会」とバランスとりながら生きていくしかないよなあとも思ったり。


