
torajiro
@torajiro
2026年9月19日
御馳走帖改版
内田百けん,
内田百間
読み終わった
内田百閒の「食」に関する随筆集。最初に刊行されたのは1946年ということで、戦後すぐの混乱期。戦中や戦後すぐの食事事情を綴ったものもあれば、戦前のもの、幼少期を懐かしむものなど百鬼園先生らしく、時系列もテーマも書き振りも縦横無尽に描かれています。本書はその後何度か再刊され、追記もなされた版ということで400ページ程の大ボリュームになっており大変満足致しました。戦中・終戦直後の世情というのは本書のテーマである「食」についても非常に厳しいものもあったのだろうと思いますが、百鬼園先生の筆にはそのような様子はあまり見受けられず、日々の食事やお酒、そしてそれを介した人との関係を自然に楽しみつつ、ただ書き振り的にはそんなに楽しそうだったりご機嫌だったりする感じもしない淡々とした様子がいつもの魅力です。
個人的にはやはりなんといっても回りくどいまどろっこしい文体が大好きです。本作のお気に入りは『喰意地』の
「いつぞや本社の人から缶詰を数種貰ったところが、缶詰と云ってもそれは私がさう思っただけの事で、この頃の事であるから容れ物は大概罎であった。それでは罎詰を貰ったのかと云ふに、私の気持ちは素直でないから、缶詰が罎に入れてあると考へて中身を賞味した。実は果物などは輸送上の事は別として、金気の缶に入れるよりも罎に入れた方がいいかも知れないと思ひながら、桃の缶詰の罎詰はうまかったと云ふ風に廻りくどく考へた。」
という件。こんなの真似しようものならただのうざったらしい文章にしかならないのでやっぱりすごいなぁと思うのです。
