
柴犬
@storyseller
2025年4月8日

正欲
朝井リョウ
読み直した
若いってああいうことだよな、と思う。背中に余計な脂肪がついていないこと。自分の暇を埋めるためには思い付きで誰かの感情を引っ掻き回してみてもいいと思っていること。社会の多数派から零れ落ちることによる自滅的な思考や苦しみに鈍感でいられること。鈍さは重さだ。鈍さからくる無邪気は、重い邪気だ。
負の感情に呑み込まれそうになったとき、夏月は、田舎の車社会の数少ないメリットを実感する。どれだけ我を忘れて感情が暴走しそうになっても、自分の身体より遥かに大きくてパワーのある鉄の塊を操るとなると、落ち着かざるを得ない。
みんな本当は、気づいているのではないだろうか。
自分はまともである、正解であると思える唯一の依り所が"多数派でいる”という
ことの矛盾に。
三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、"多数派にずっと立ち続ける”ことは立派な少数派であることに。
明日もきっと、未来から見た"あのとき”になる。








