ユメ "東の海神 西の滄海 十二国記" 2026年9月8日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月8日
東の海神 西の滄海 十二国記
私は『十二国記』の登場人物の中で延王・尚隆がいちばん好きなので、彼が主役となるこの『東の海神 西の滄海』はシリーズの中でもとりわけ魅了された巻(言わずもがな、どの巻も夢中になって読んだのだが)。 尚隆は、公務を抜け出してフラフラしているかと思えば、その実、他国の様子を偵察していたり民の暮らしぶりに目配りしていたりして、十二国随一の剣客であり、豪放磊落な武断の王でありながら、民を傷つけることを頑ななまでに厭う情の深さを持っている。そんな傑物、好きにならずにはいられない。 六太に「国が欲しいか」と問われて「欲しいな」と即答した彼はしかし、私利私欲のために王座を欲したわけではない。尚隆は、己が民から託されているからこそ権力を得られているのだということにこのうえなく自覚的で、それこそが優れた王の資質なのだという気がする。 「民は俺の身体だ。民を殺されるは身体を刳られることだ」という尚隆のような指導者ばかりなら、どれほど世界は平和になることだろう。 「俺はお前に豊かな国を渡すためだけにいるのだ」という台詞には、本当にたまらない気持ちになる。 刊行順に従って先に『月の影 影の海』を読んでいる読者は、尚隆が更夜と六太それぞれとの約束を守り、雁を500年に渡って繁栄するひとの飢えない国にしたことを知っているから、六太が目を瞑っていなければならない刻はもう過ぎたのだ——と改めて嬉しくなるのだ。
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