
ジクロロ
@jirowcrew
2026年9月23日

ブレイク詩集 (岩波文庫)
ウィリアム・ブレイク
哀憐が納まりかへつてをれるのは
誰かを貸しい目にあはせてゐるからだ。
慈悲が余命をつないでゆけるのは
みんなが我等と同様に幸福でないからだ。
互に恐れ憚る気持が平和をもたらし、
かくして利己の愛がますますつのる。
そのとき残忍がわなを編み
心をつくして誘惑のをひろげる。
残忍は恐怖を聖化しておのが座をつくり、
涙をふりしぼって地上をうるほす:
されば謙遜は残忍の足もとに
根を下ろすのほかはない。
やがて暗鬱な神の樹が
残忍の頭上に枝をはりめぐらし、
醜悪な毛虫や蠅が
この神秘を食ってふとる。
つひにそれは欺瞞の果実をむすぶ、
赤く熱れてるて食へばうまい:
そして大鴉が巣をかけた、
その最もよく茂つたくらがりに、
この掛を見つけようとて海山の神神は
自然界をくまなく探し求めたが、
彼等の探索はみな悉く無効に帰した:
人間の頭の中にこの街が一本生えてある。
(『人間抽象』)
このようなことを謳うブレイクにとって、自己という抽象(概念)がどれほど貧しいものであったかは想像に難くない。
最後の韻律、
(But there search was)all in vain と
(There grows ) one in the Human Brain. の
響きのもの哀しさ。
崇高な「all」を無に帰するつまらない「one」と、「n」の奈落。
「Brain」の綴りの内に「rain」が含まれていることに、この詩(の流れ)から、偶然からか必然なのか、気づかされる。

