あかねいろ "方舟" 2026年9月24日

方舟
方舟
夕木春央
読了! はじめに書いておくと、面白かったけれど、最後の最後でいまいち物語に没入出来なかった、というのが正直な感想。 けれど、没入出来なかった! で終わってしまうのはあまりにも勿体ないので、 じゃあ、没入しきれなかったのはなんでなんだろう? と自分なりに少し振り返ってみた。 そうして思い至ったのが、 犯人が探偵役を上回るレベルの切れ者であったという事実をうまく咀嚼出来なかった、 ということ。 絶対に死にたくないという死への拒絶(重ねて犯人は溺死も恐れていた)、または生への執着が人を狂わせるというのは物語の定番というか、いわば真理だとは思うんだけれど、にしても犯人の計画の組み立てが異様に早すぎるように感じた。 (犯人は昔から頭の回転が早かったとか、昔からこういう人間だったとかそういった描写は、少なくとも自分には読み解けなかった) 【異常事態発生→状況把握→任意の数名を殺害、及びその他全員を見殺しにすることにはなるが自身は生き残れる計画を立案→即実行】と、 犯人の倫理観がどうこうというよりも、この計画を瞬時に立てられるような論理的思考を持ち合わせている人物だったという事実があまりにも予想外すぎた。 (提示された意外性が「へぇ〜、意外だね〜」で済む許容範囲を超えてしまった、という表現が今のところ一番しっくりきている。(もはや「だ、だれ……?」みたいになってしまうやつ)) 要するに、犯人判明からどんでん返しのあの部分に至るまでずっとその感覚を引きずり続けてしまった、というのが物語に没入しきれなかった主な理由になるのかなと、自分のなかで結論づいた。 と、自分なりにモヤモヤしたところを振り返ってみたけれど、物語の展開や終わり方はとても好みなものだった。 物語の最後で、犯人が用意していた救いの手に主人公は気付かず、最期は洪水に飲まれて同志もろとも命を失うという終わり方は、ノアの方舟の逸話のバッドエンドアレンジを見ているようだった。 一方で唯一生き残ったであろう犯人はこの後どんな人生を送るのだろうかということを考えたけれど、たぶん、なんとなくだけれど、毎年当たり前のように彼らのお墓に線香を上げに来るんじゃないかなと思った。 今回の出来事はいつしか彼女の『昔話』になって、普通の人生を普通に生きていくような、そんな気がする。
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