ユメ "風の万里 黎明の空(上) 十..." 2026年9月10日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月10日
風の万里 黎明の空(上) 十二国記
『十二国記』シリーズは、異世界を舞台にした王と麒麟による国の統治を描く壮大なファンタジーでありながら、現代日本を生きる私たちにも通ずるような、人間ひとりひとりの生き様や心の在り方を活写したヒューマンドラマでもあり、各巻にそれぞれ胸に迫るエピソードがある。 ゆえにどの巻にも思い入れがあるのだが、個人的に心に刺さる台詞が最も多いのが『風の万里 黎明の空』上下巻だ。 本書には、祥瓊と鈴という、慶の女王となった陽子に会うことを切望する二人の少女が登場する。祥瓊は陽子に一方的な恨みを、鈴は陽子に一方的な期待をそれぞれ募らせ、やがて三者の人生は運命的な形で交錯することになる。 上巻における三人の少女の行動を見ていると、自分を哀れむのがどれほど簡単なことで、いちどその心境に陥るとそこから抜け出すのがいかに難しいか痛感させられる。 もちろん、民の暮らしは政によっても大きく左右されるので、自分ひとりの力で人生を好転させられるとは限らないが、己と闘い、己を変えようとしなければ、何も始まることはない。 陽子に面会しようと旅をする鈴が出会った少年・清秀の、「しょせん人間なんて、自分が一番、自分に甘い生き物だろ?その自分ですらさあ、好きになれないような人間を、他人に好きになってもらおうなんての、ものすげえ厚かましくない?」という台詞はとても耳が痛く、ずっと心に刻んでおきたい言葉だ。 三者三様の苦境に立たされている少女たちだが、陽子だけは己を哀れむのではなく不甲斐なく思い、そんな自分を変えようともがいている。私は彼女のようになりたい。
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