ユメ "風の万里 黎明の空(下) 十..." 2026年9月11日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月11日
風の万里 黎明の空(下) 十二国記
上巻では面識もない景王・陽子に対して身勝手な感情を募らせていた祥瓊と鈴だが、慶国へ辿り着き、地方官吏の悪政を正そうとする市井の人々と関わりを持つうちに、次第に考えを改め始める。 ひとは変わることができる生き物ではあるが、それを可能にするには不断の努力が要求される。まず、昨日までの自分が誤っていたことを認めねばならず、己と向き合い続けることも生易しくはない。 けれど、祥瓊と鈴はそれを成し遂げた。率直に言って物語への登場時の印象がよいとは言いがたい彼女たちだからこそ、その変化が読むひとを勇気付ける強いメッセージ性を孕むのだろうし、最終的に二人のことを好きにならずにはいられない。 そして、上巻から——否、『月の影 影の海』の時点からずっと自分を変えようともがき続けていた陽子は、祥瓊と鈴との邂逅を経て更なる成長を遂げる。そんな陽子が物語の最後に下す初勅には、改めて胸を打たれた。 陽子は王の力が万能ではないこと、自身が権力を手にしているのは民のためだということをきちんと理解している。もちろん彼女は引き続きよき王となるべく努力をするだろうが、決して豊かとは言えない慶が復興するには時間がかかるだろう。そんな国で生まれ、生きてゆかねばならない人々への願いや祈りがこめられた、陽子の誠実な心根を反映する初勅だと思う。
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