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@bunkobonsuki
2026年9月26日

冬に子供が生まれる
佐藤正午
あだ名は功罪両方の側面がある。
人が人を呼びやすくする一方、その人の人格をうやむやにしてしまう。
本作は、あだ名の「罪」を描いた小説といえよう。本を読み始めてからずっと、私は「登場人物は誰のことを語っているのだろう?」と疑心暗鬼に陥っていた。
本作にはマルユウとマルセイという二人の人物が登場する。どちらも苗字は丸田で、名前を省略してつけられたあだ名がマルユウ、マルセイなのだ。
作中ではマルユウとマルセイが区別なく使われる。マルユウのはずの人物がマルセイと呼ばれたり、逆もしかり。
作中の登場人物も、読者である私たちもどちらがどちらか分からなくなっていく。
本作の筋はこれだけではないのだが、私はこの点が非常に面白いと思った。人々が他者を語るうち、語られる側の人物像が変形していく。あだ名というよくある現象から、これだけのミステリが起きるのだ。
