
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月14日
図南の翼 十二国記
小野不由美
読み終わった
心に残る一節
感想
再読
再三書いてきたが、『十二国記』シリーズはどの巻にもそれぞれ異なる多彩な魅力がある。その中でも、純粋にストーリー展開がいちばん好きな巻を問われたら、私はこの『図南の翼』を挙げたいと思う。
王不在の荒れ果てた恭国を舞台に、弱冠12歳の少女・珠晶が家を飛び出し、麒麟のいる蓬山への昇山を目指す物語である。
その道程でずっと勝気に、さも自分が王の器だと信じているかのような自信に満ちた振る舞いを続けていた珠晶が、物語の終盤で昇山した真の理由を激しく吐露するシーンには、再読であっても胸を突かれ、熱い想いが込み上げてくる。彼女がどれだけの勇気と覚悟を持って危険な旅をしてきたのかを思い知らされ、すっと背筋を正されるのだ。
私が恭国の民であったとして、珠晶のように行動できるかと問われたら、答えは否だ。生まれてきた時代の荒廃を嘆き、かといって自分がそれをほんのわずかでも変えられるかもしれないことなど端から諦め、そのうち「運悪く」妖魔に襲われて命を落とす——そんな人生が関の山だという気がする。
だから私は珠晶の魂の叫びに己を恥じ、同時に、少しでもよい生き方をしなければと背中を押してもらったような想いになるのだ。
最後に珠晶が供麒に向かって放つ台詞「——だったら、あたしが生まれたときに、どうして来ないの、大莫迦者っ!」は、非常に痛快でありながら、彼女が王の不在によって奪われてきた命にどれほど胸を痛めてきたかの証左でもある。
珠晶が旅の途中で出会う二人の謎多き人物——利広と犬狼真君、それぞれの正体が明かされる瞬間の感動も鮮やかで、やはり私はこの『図南の翼』という物語が大好きである。



