
きらた
@kirata
2026年9月27日

同じ星の下に (幻冬舎文庫)
八重野統摩
読み終わった
『ペンギンは空を見上げる』が、ミステリで少年の成長譚で感動に震えた作品だったので、“あの作者さんの作品かー!”とむしゃぶりつきました(言い方)
しかしこれ、テーマがめっちゃ重い
‥『ペンギン〜』も重めテーマが隠されていましたが、こちらの方は倫理的な意味も含めてもっと重かった
直接的な表現は避けているのですが、それ故に、日常的に受けているとの察しが付いてしまい‥ただ只管に辛く苦しい
誘拐は紛れもなく犯罪なのだけど、この誘拐は是だなと思ってしまう‥
中2の沙耶は下校中に児童養護施設の職員を名乗る男に声をかけられる
相談の電話をしていた沙耶は疑いもなく男の車に乗り込み、連れて行かれた家の中で、沙耶は自分が誘拐されたと知った
真冬の北国、足に鎖を繋がれた中で始まる犯人と2人きりの監禁生活
自分の家よりもはるかに裕福と思える家に囚われた沙耶
暖かい部屋に温かな食事
部屋の隅には立派なクリスマスツリー
囚えられた直後こそ恐怖を感じた沙耶だったが、それ以降、脅かす事はせず、穏やかに静かに接する男から優しさを感じるようになって行く
しかし男が提示した身代金は2千万
自分の家にそんな金はない、そもそも親が金を出すはずがないと沙耶が言っても、男は心配するなと言うばかり
しかも男は、身代金目当ての営利誘拐だとの犯行声明を警察に直接送っていた
犯行声明が届いた警察は、事実確認のため沙耶の学校や両親のもとに聞き取り調査に向かい──
沙耶と誘拐犯の日々と、誘拐事件を調べる刑事の視点が交互に語られながら話は進む
沙耶の置かれていた境遇は、沙耶の口から犯人に伝わったり、沙耶の思考との形で読者に伝わるが、事件を調べる刑事にも、学内での様子や両親の態度から伝わっていく
娘を誘拐された被害者である両親に対して複雑な感情を抱きながらも事件を捜査する刑事たち
刑事は内心煮えくり返っているとわかるので、心の何処かがホッとするし、そこまで仲良くないけど“何かおかしい”と気付いて気にかけているクラスメイトの存在も嬉しい
そして何よりも誘拐犯の男の態度が!
誘拐犯と被害者との形ではあるのだけど、沙耶の両親と比べても、誘拐犯の男の方がまともな大人と子供の関係になっている
何が食べたいか訊き、夜更かしはしないようにと注意し、具合が悪そうな時は雑炊を作り、枕元に飲み物を置き、病気の子供を1人には出来ないと会社を休む
誘拐中の生活だと分かっていても、犯人と沙耶の会話が軽妙なので、2人の日々に微笑ましさを感じてしまうし、沙耶はそんな日々を自宅では送っていなかったのだとの事に苦しさを感じる
虐待との重く苦しいテーマを描きながらも、誘拐生活の優しさと切なさにホロリとしながら読み進め、身代金引き渡し当日、刑事と両親と犯人と沙耶がその場所に集い──事件は終わる
誘拐犯は何者なのか、何が目的だったのか?
話の途中で何度も涙を拭いていたが、エピローグでは涙が止まらず、読み進めるのが困難になるほどだった
善人過ぎる男が向き合った罪と罰
八重野統摩の作品は、ミステリだと思って読み始めたら読者に訴えてくる人間ドラマで、でも最後まで読んだら、ミステリでもあったなぁと思う作品ばかりなんでしょうかね?
なんか泣きすぎて目が痛いし頭が熱持ってる感覚でフラフラする‥
優しくて切ないけど、重くて苦しいから読む方は心身を整えてからどうぞ!
