
柴犬
@storyseller
2025年4月9日

世界99 上
村田沙耶香
読み終わった
『可哀想』って、最大の暴力よね
こういうことには慣れていた。というより、私はいつもこういう感覚の中にいるのだった。私という人間を、私ではなく、周りの人間が作り上げていて、中にはなにもない。みんなそうなのだろうと思っていたが、それぞれ、いかにも「本当の自分」があるように振る舞うのでよくわからない。
私自身がそうであるように、他の皆の振る舞いもぜんぶ模倣なのかもしれない。だとしたら最初の「典型的な人間」はどんな人だったのだろう。みんな中身がからっぽなら、誰かが「私はからっぽです」と言えば、「そういえばそうでした」「ぼくもそうでした」ということになり、それが「典型的な人間」になるのかもしれない。子供だったのでこのままの言葉ではないが、当時の私はいつもそんなようなことを考えていた。
「一番おぞましいのは好意だよ。僕を『受け入れて』くれる人のために、ずっと典型例にさせられ続けるんだ。僕の人生はもうない。僕は餌食になった」







