
和月
@wanotsuki
2026年9月27日
帰れない探偵
柴崎友香
読み終わった
どういう話?と問われたら、表題のまま、帰れない探偵の話としか答えられない気がする。
現実と空想の隙間に在る物語。
知っている国のようで、何かが違う。「帰ることが出来ない」という条件下では、終始根無し草のような感覚が付きまとう。
主人公の「わたし」が転々と抽象的な街を移動する様を読んでいると、読者である私達も「帰れない」を追体験することが出来る。何処にも所属しない存在だからこそ、その場所の違和感や特徴に対して敏感になる。
探偵が主体ではあるが推理小説ではなく、「わたし」の日常・仕事風景を辿っていくお話。
想定していた作品とは違っていたが、ポール・オースターの『ガラスの街』を読んだ時のように次第に惹き込まれていった。
細やかなディテールが数多く登場する。架空の国々はどこかをモデルにしているのだろうな、と感じられる節があるので、調べてから読み直すのも一興。著者のインタビュー記事を読むと、取り入れられているドラマ等を知ることが出来て面白かった。
本作は、枠組みがきっちりと描かれている明快な作品では無い。曖昧な視点の中で、見えている物や感じている事、各々が持つ記憶は異なり、多角的な場所が生まれる。そこで過ごした時間はやがて過去と未来に繋がっていく。
ふわふわとした読み心地だからこそ、一度読むだけでは分からない場面が沢山ある。それでも、分からないままで置いておきたくなる。
またふとした時に読み返したら新しい発見があるかもしれない。そう感じられる作品だった。
音楽が特徴的な物語でもあるので、次はその時々に合わせた音楽をかけながらゆっくりと読み直したい。



