糸太
@itota-tboyt5
2026年9月28日
読み終わった
歌人とは、歌を「見つける」ことができる人なのかもしれない。
うまく「書く」ことができる人は結構いるだろう。初めは下手であっても、練習を積み重ねれば上達もする。けれども、何を歌うかを「見つける」のは、練習したから必ず身につくのもでもなさそうだ。
伊藤さんは、自分をよく観察する。そこにこそ、見つけようとしているものが隠れているかのように。
『RAWの言葉』という章が面白い。写真データのことで、自分の心に浮かんでくるありのままの気持ちを「RAWデータ」、誰かとコミュニケーションを取りやすい社会性の高い言葉を「JPEG」に準える。
伊藤さんはJPEGへの変換が苦手だと振り返りつつ、それが自在に操れる人のことを羨む。しかしその技術が高すぎれば、おそらくRAWは意識すらされなくなるだろう。「だとすると、RAWの言葉をRAWのまま自分の心の内にありありと感じ、触れられること自体が、ひとつの才能でもあるのか」もしれない。
歌はここにあるように思えた。大概の人は成長とともに忘れてしまっている心の動きを、伊藤さんは日常の中で手繰り寄せようとしている。
その方法を試行錯誤する姿が、なんともユーモラスなのである。
一気に好きになった。順番が逆かもしれないけど、今度は歌集にもあたってみようと思う。
