
阿久津隆
@akttkc
2026年9月16日

凍
トーマス・ベルンハルト,
池田信雄
読んでる
p.25
彼の食べ方は、動物のようでも労務者のようでもない、とはつまり本能に発した食べ方ではないのだ。ひとかじりひとかじりが、自分に向けられた嘲笑だとでもいうかのようだ。彼は目の前のミートローフは「死体の一部だ」と言った。その言葉を発しながら、ぼくをみつめた。ぼくは、彼の期待に反して、その言葉に嫌悪感を催さなかった。ぼくはたえず死体の肉を相手に仕事をしているので、何に対しても嫌悪感を催さなくなっている。そのことを画家は知るよしもない。「人間が口にするものはすべて死体の一部だ」と彼は言った。彼ががっかりしているのが分かった。子供じみた失望から彼の顔には苦しげで落ち着きのない表情が浮かんだ。
失望が子供じみ過ぎている。