
積読家
@tsuntsundondon
2026年9月30日
夏物語
川上未映子
読み終わった
マチアプで会った人にオススメされた本。あらすじがアラフォー女性が精子提供による出産を模索するというテーマが妊娠と女性の権利のようで、さらに序盤を少し読んでみるとなかなかお先が暗い展開だったから,本当にこれを私に勧めるの?と聞いてみたら,「勇気をもらえたから」と。じゃあ読んでみるかと読み始めたのは、もう縁を切った後だった。
読んで色々な角度の感想が出てきたが、ここでは子を産むことに焦点を当てる。子供を持つことについて,率直に言って本作は男が最低限しか出てこない印象を受けた。本の中に出てくる「父親(夫)」は大抵機能しておらず、なんなら家族を脅かす存在になっている。もちろんまともな男もいる。ただ、精子提供による出産の話が重要なテーマとなっていたが、極論「男」という人間は必要なくて,精子されあればいいのかと素直に感じた。登場人物のうち、離婚して女手一つで子どもを育てている遊佐の言葉が私には衝撃的だった。子どもをつくるのに男の性欲も女の性欲も必要ないこと。そこには女の意志、女が子どもを抱きしめたいと思うかどうかだけだということ。
そっか、男の意見なんて正味関係ないのかとなぜか私は腑に落ちてしまった。なぜなら、男は子どもを持つことにおいて負担も覚悟も責任も負わずに済むことができてしまう。
話が飛ぶが、最近男性アイドルが実は子どもがいましたと発表して大炎上していた。男は子どもができたことを報告することさえも選べるのだと気づかされた。女はキャリアを一旦ストップせざるを得ないのに。
しかし、人間は生物界において奇妙な存在だなと思考を拡散させる。繁殖においてメスの個体は必要不可欠だし、生物界ではオスは自分が選ばれるために工夫を凝らして求愛活動をする。でも人間界では,オスの方がなんか優位なイメージがある。私の偏見から言わせてしまえば、その立場の優位さを無自覚に驕っている人もいる。それって,社会の構造、つまり男性優位社会が築き上げられたせいだなと思った。でも自然の法則に沿えば、男性優位社会って作られないのでは?いつからなんだろう?という疑問が浮かび上がったが,それは以前読んだ「絶望しかけた女子のための世界史」が一つの解を教えてくれた。後世の権力者が男性に権力を集中させたくて、力を誇示したくて、女性の存在を歴史から抹消したからだ。
私にとってこの物語は、女性として何を選択しようと選択しなかろうと何らかの責任を指摘されそうなそんな肩身の狭さがある中で、傷を背負いながらも自分自身で決める力強さを見事に書いてくれた物語だと感じた。ただ、人によってこの物語から受けるインパクトは違うと思う。それくらい、女性たちの生活に寄り添ってくれているように思った。
さて、この本を読んだきっかけに戻るが、マチアプで会った「彼」は「私」にどうしてこの本を勧めたんだろうと読んだあとさらに疑問は深まった。なんで出産できない属性を持つ人が,出産できる属性の人にこの物語を勧めたんだろう。彼はどういう立場からこの本から勇気をもらったのか,話を聞いてみたかったなと,もう会うことのない彼にも思いを巡らせる。ただの読書体験じゃなくて,この本に自分の経験や文脈を重ねることでより一層思い出深い体験になった。


