夏物語

57件の記録
- Suzuki@finto__2025年4月11日読み終わった★★★★☆ 「残された熱気とともに夜へむかい、ゆっくりと沈んでいこうとしている夏の夕刻は、いろんなものがこんなにはっきり見えるのに、いろんなものがあいまいだ。懐かしさとか優しさとか、もう取りかえしがつかないことやものたちで満ちていて、そんなもやのなかを歩いていると、おまえはこのまま進むのか、それとも引き返すのかを問われているような、そんな気がしてしまう。もちろん世界の側がわたしに関心があるなんてことはないのだから、これはどこにでもある自己陶酔だ。何を見ても、見なくても、感傷的な物語を立ちあげてしまうこの癖は、わたしが文章を書いて生きていきたいと思うこの気持ちの、足をひっぱるものなのか、それとも応援するものなのか。今はまだよくわからない。でも、いつまでわからないでいられるだろう。それもまだわからない。」p66
- ハチカ@hachika2025年3月18日読み終わった読みたいと思いながら先のばしになっていた本。いまの年齢で読めてよかった。 子どもを産むとか育てるとか、考えない日はないけれど、実際それとどう向き合うのか、いつまでも私の答えはでない気がする。
- haru_68@haru_682024年10月3日読み終わったNo.2 (2024年2冊目) 『夏物語』 川上未映子 ✒︎ ___________________________________________ 大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。 38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。 子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。 そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく。 生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、全世界が認める至高の物語。
- 村崎@mrskntk2022年10月5日読んでいると、自分がいかに今まで鈍感にこの世界を生きてきたんだろうと思う。鈍いことはもしかしたらある意味で幸福なのかもしれないけれど、もう鈍感ではいられないし、鈍感なふりもできない。「夏物語」はこの世界に生まれること、そして生むことについて考えられずにいられない。 AIDで生まれた善百合子は、夏子に「あなたはどうして、子どもを生もうと思うの」と問いかける。 生む側にはいろんな理由が、いや実際には理由はいらなかったとしても、いろんな答えがある。子どもに会いたい、育てたい、幸福を教えたい、さびしいから、かわいいから、老後の面倒を見てほしいから。 善百合子の言っていることが極論だとしても、極論とは言えないのだよなと思った。わかってる、実際に子どもを生む多くの人たちが子どものことを考えて生んでいることを、生まれてきた子どもを愛していることを、わたしはわかっているけれど、それでもどうしても、「子どもを生む人は、みんな自分のことしか考えない。生まれてくる子どものことを考えない」という善百合子の言葉を否定できない。 善百合子は「出産は賭け」だと言う。たとえば小さな家に、十人の子どもが眠っているというたとえ話。わたしはきっと、この話を一生忘れることはない。