
ケイ
@flyingkei
2026年9月30日
御社のチャラ男
絲山秋子
読み終わった
初・絲山秋子作品。好きな作風⋯!
ビネガーとオイルを扱う小さな会社・ジョルジュ食品には、チャラ男がいる。本作は部長である彼について、章ごとに様々な人の目線で語られていく連作様式の作品となっている。しかし、人々がそれぞれの目線で見るもの、語るものはチャラ男のことだけではない。他の同僚について、会社について、社会、地域、そして自身の人生について彼らは語る。そこで語られるそれぞれの自己認識は、他の章で他人の目で見た姿として描かれる彼らの姿とは一致せず、同様に、チャラ男についても、見る人によってキャラクターは異なり、当然チャラ男自身が語り手となった章ではまた全然違う世界が広がる。
人は人をジャッジする。性格を、価値観を、生き方を、面と向かってにせよ内心のつぶやきにせよ、誰もがどこかで一方的にカテゴライズし、ラベルを貼り、ジャッジして、場合によってはランク付けをする。その怒りは本当に自分の中から湧き出たもの? それとも正義の側から怒りたいから理由を探しただけ? 必死に働く人を哀れむのは本当に心のゆとりから? 必死になれない自分を正解にしたいから相手を低く評価しているだけでは?
⋯すべての目が色眼鏡であり、すべての言動が自己欺瞞であり、人間とは本当に矮小で痛々しい。それでも、誰もが自分以外の何かを、誰かを気にかけている。大切に思いたい、きちんと関わりたい、手放したくない、諦めたくない何かを持っている。矮小で痛々しく、けれどそんな歪んだ視界の中でも揺らがない足場を求めて右往左往する人間たちが、どうしたって愛しく見えてくる一冊。
