
オムロちゃん@ゆっくりレモン
@Omuro
2026年10月1日
国宝 下 花道篇
吉田修一
読み終わった
青春という言葉では生ぬるい。
これは、命を燃やして生きるということを見せつけられる話だった。
喜久雄の人生は、とにかく怒涛だ。
夢を叶えるために何かを手に入れるたび、その代わりに何かを失っていく。
娘に言われた呪いのような言葉は、まさにその象徴だと思う。
現代的な感覚で見れば、ただのモラハラにしか思えない振る舞いも多い。それでも、自分自身さえ壊していくようなその生き方が、たまらなくかっこよく見えてしまう。
他の作品なら一つの大きな事件として掘り下げられそうな出来事でさえ、喜久雄の人生の中では次々と過ぎ去っていく。
彼は事件の決着にはさほど興味がないのだろう。出来事そのものが霧散していくように物語が進むところにも、喜久雄という人間の、芸事への異常なまでの執念を感じた。
国宝を読んでから、命を賭けて頑張るという言葉を気安く使えなくなった。
何かに命を賭けるというのは、決して安いことではない。
それでも最後には徳次が帰ってきて、喜久雄は人間国宝になる。
少し苦味の残るあの終わり方のあと、二人がどうなったのかは気になる。それでも、あれだけすべてを舞台に捧げてきた喜久雄に、ほんの少しでも平穏な時間があってほしいと思った。
俺の人生で忘れられない一冊になった。