
トラ
@Toreads1234
2026年10月2日
エッセイなんだと思うけど、フィクションと見分けがつかない。出来事の細部が面白い。運と勘と観察眼のよさなのかな。2-5Pくらいのものがほとんどで、文自体も平易で読んでいて引っ掛かりが全くない。その分、内容はフックだらけでずっと面白い。
どんな人におすすめするかが難しいけど、とても好きなエッセイになった。
異国(旅)、幼少期、文芸との関わり、映画、異国(生活)、生きる、という感じのテーマごとに色々な媒体から面白文章が選び出されてる。
とにかく凄い。柳のように起きた出来事に合わせて動く人というイメージだが、知識、経験、コミュ力、記憶力等の能力が高すぎるし、何より行動力が凄い。初めてこの方の文章を読んだけど、川内さんのフィルターを通したら世界の面白さが上がる。恐らく「パイプ椅子」とか「ペットボトルの水」とかでも自分が想像していないような世界を見せてくれそう。それくらい平凡に非凡を注入してる。しかもどこにもドヤ感が無いし、内と外の切り分けが上手いのかも。こちらから見たら異常とも思える場面でも同じような温度感で書かれているのがとても心地いい。
近くに住んでたおじさんが鈴木敏夫(ジブリ)だったとか、所々文化資本の差を感じさせるエピソードもあるが、全く自慢気でもなく、唐突さに笑える。
著者が好きな作家である向田邦子のエッセイを評して
「その鮮やかな展開は、恐ろしいほどの切れ味である。」(p.110)
と表現しているが、私も著者(川内有緒)の文章に同じ感想を抱いた。
「うまくいかなくても、たいていのことはやり直せると思っているし。」(p.200)
死ぬこと以外はかすり傷、みたいに人が言いがちな内容ではあるけど、200ページ見せてきた著者のダメージ受け流し力みたいなものを、ご自身で言語化してくれて、カタルシスがあった。この人は本当にそう思ってるだろうし実践してきただろうという説得力がある。