
福藻
@fuku-fuku
2025年4月10日

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)
ドメニコ・スタルノーネ,
関口英子
バカンスから戻った老夫婦を待っていたのは、我が家の見るも無惨な姿だった。あらゆるものが壊され、散乱し、飼い猫の姿も見当たらない。
語り手の異なる三つの章を読み進めるごとに見えてくる家族の全体像、そして事件の真相。妻、夫ときて、最終章の娘の語りで何もかもが覆される。
繕うことのできない綻びに気づかないふりをして、幸せな家族を演じてきた彼らの結末。
他人事ではないな、と恐怖を感じつつも妙な安心感。家庭とは温かいもの、という押し付けが一切ないところがそう思わせるのだと思う。


