
gato
@wonderword
2026年10月3日

本を書く (ポケットスタンダード)
アニー・ディラード
読み終わった
再読
引用
ディラードは「魅力的な仕事場は避けるべきである。部屋には眺めなどいらない」と言いながら部屋から眺めた風景についてばかり語っているし、「作家は文学を学ぶ。世の中を学ぶわけではない。もちろん、彼は世の中に住んでいる。そこから逃れることはできない。ハンバーグを買っても、飛行機に乗っても、その経験を読者と分かちあうことはしまい」と言っているのに、最終章は丸々スタントパイロットのラームと彼の飛行機に乗ったディラード自身の体験に捧げられているという、韜晦というか矛盾というか、捻くれた書き方に特有の面白味があると思う。
単行本版訳者あとがきの「彼女の文章はジェンダーレスである」「訳していて、彼女の思考に性別を感じなかった」という柳沢さんの言葉、ストックホルム大学で学びフェミニストとしても活動する人の96年当時の言葉だと思うとまた違った響きがある。
ディラードは別に"男ぶってた"わけじゃないし、柳沢さんが言いたかったのもそういうことではないだろう。本書にはこんなくだりもある。
「あなたは結婚なさっているようですな」と、ある男が私に言った。ニューヨークで私の本の出版社が開いてくれたフォーマルな昼食会の席上でのことだった。
「本を書く時間など、どこにあるんですかな」
はあ?
「だって、そうでしょう」とその男は言った。「例えば、庭の世話があるでしょう。ご主人のお客ももてなさなければならないだろうし」
p.31


